睡眠時無呼吸症候群と循環器病─ そのいびきが危ない!

 

国立循環器病研究センターからの警告も!!

 

              2018年3月2日

 

ここだけでも読んで下さい!時間のない人でも。

睡眠時無呼吸症候群は、文字通り寝ている間に何回も呼吸が止まる病気です。英語では Sleep Apnea Syndrome といって、頭文字をとって SAS(サスと読みます)と呼ばれています。睡眠中、平均して1時間に5回以上、それぞれ10秒以上呼吸が止まる場合は、この症候群の可能性があります。

国立循環器病研究センターでは年間約500人の方がこの検査を受け、うち約80%がこの症候群の疑いがあると診断されています。

この症候群は単に呼吸が止まるだけの病気ではありません。心臓、脳、血管に負担をかけるのです。実は、睡眠時無呼吸症候群があるだけで高血圧症、脳卒中狭心症心筋梗塞など循環器病を合併する危険が高まることがわかっています。無呼吸回数が多くなるにつれて、つまり重症になればなるほど、そのリスクは高くなります。

しかし、一方で、この症候群の治療をきちんと受けると、長生きできる可能性があることもわかっています。

いびきは無呼吸の前兆です。そのため、いびきは睡眠時無呼吸症候群の患者さんの多くに認められます。しかしこの症候群はいびき以外には自覚症状が出にくい病気です。昼間の眠気を自覚される方もいますが、それは半数程度で、なかなか自分だけではわかりにくい病気なのです。

周りの人から寝ている時のいびきや無呼吸を指摘されている方は、ぜひ専門医療機関を受診してください。そして、周りでいびきがひどい方や寝ている間に呼吸がしばしば止まる方がいたら、ぜひ受診を勧めてあげてください。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

(1)「閉塞性」と「中枢性」の2タイプ

ここから睡眠時無呼吸症候群について詳しく説明します。

睡眠中10秒以上、呼吸が止まることを「無呼吸」と呼び、無呼吸にはなっていないけれども、もう少しで止まりそうな弱い呼吸を「低呼吸」といいます。

1時間あたりの平均の無呼吸と低呼吸の回数を「無呼吸・低呼吸指数」(AHI)(注1)といいますが、この指数が5以上(5未満は正常とされています)であれば異常と判定し、これを「睡眠呼吸障害」(SDB)(注2)といいます。

睡眠呼吸障害のなかで、日中の眠気や倦怠感などの症状を伴う場合、今回のテーマである「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)と診断します。最近は、症状がなくても無呼吸・低呼吸指数が15以上ならばこの症候群と診断してよいことになっています。

睡眠時無呼吸症候群というと、いびきがひどくて、肥満の人を想像する方が多いと思います。もちろんこの症候群の患者さんにはそういう方が多いのですが、必ずしもすべての人が肥満でいびきがひどいというわけではありません。

実は、睡眠時無呼吸症候群SAS)は大きく分けて2種類あるのです。一つは、呼吸という運動は保たれているが上気道のどこかの閉塞によって鼻・口の気流が停止する「閉塞性(obstructive)」の睡眠時無呼吸症候群もう一つは呼吸運動そのものが停止する「中枢性(central)」の睡眠時無呼吸症候群(CSASといいます)です。これはいびきを伴いません。

更に続けて国立循環器病研究センターは、いびきを原因とする無呼吸症候群が引き起こすであろう病気について次のように警告もしています。

 

(1)「閉塞性」の場合(つまりいびきを原因とするもの)

循環器病にかかりやすくなります。また、すでに循環器病を持っている場合、「閉塞性」があれば、その循環器病にさらに負担をかけてしまいます。

以下で主な循環器病との関連を解説します。

*高血圧

「閉塞性」であること自体、高血圧の原因になる可能性があります。「閉塞性」の患者さんの50%に高血圧が認められ、高血圧の患者さんの30%に「閉塞性」が認められると報告されています。

米国の調査研究によると、無呼吸・低呼吸指数が30以上の患者群と15未満の患者群を比較したところ、指数30以上の患者群の方が1.37倍高血圧になりやすいことがわかっています。また、薬物治療に抵抗性のある高血圧症の陰に「閉塞性」が隠れている可能性も指摘されています。

心不全

「閉塞性」は心臓に負担をかけて、心機能を低下させる可能性があります。実際、心不全患者さんの11.37%は「閉塞性」を合併することが報告されています。男女別にみると、男性38%、女性31%と男性に多いようです。いくつかの経過を観察した研究によれば、「閉塞性」を合併している心不全患者さんでは、「閉塞性」を治療しないと死亡率が2~3倍高くなることもわかっています。

脳卒中

米国での4年間にわたる研究によると、無呼吸・低呼吸指数20以上の睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、脳卒中を発症するリスクが4倍も高まりました。50歳以上の方を対象に平均3.4年間、経過をみた研究では、無呼吸・低呼吸指数が5以上の「閉塞性」の患者群は、脳卒中および死亡のリスクが「閉塞性」でない人の1.97倍になると報告されています。

不整脈

「閉塞性」の患者さんは、不整脈を合併する率が高く、無呼吸・低呼吸指数の増加や低酸素血症の悪化に伴い、合併率が高まります。夜間の不整脈は「閉塞性」患者さんの50%近くに認められています。

睡眠中に比較的よく認められるのは、心房細動、非持続性心室頻拍、洞停止、2度房室ブロック、心室性期外収縮などの不整脈です。重度の「閉塞性」では夜間の不整脈の発症リスクが2~4倍高まることが明らかになっています。

*虚血性心疾患(狭心症心筋梗塞

冠動脈に疾患のある患者さんで「閉塞性」を合併する率は、冠動脈に疾患のない場合の約2倍です。また、健康な人と比較した場合、「閉塞性」患者さんの虚血性心疾患の発症リスクは1.2~6.9倍と報告されています。平均10.1年間、経過を追跡したスペインでの研究によると、無治療の重症「閉塞性」患者群の心筋梗塞、もしくは脳卒中による死亡率は、健康な人比べ約3倍に達することがわかりました。

*突然死

「閉塞性」の患者さんが、深夜0時~午前6時に心臓が原因の突然死をきたすリスクは、「閉塞性」でない人に比べて2.57倍高いと報告されています。